トゥルー グランド ソロ

フルートのレパートリーを時代に沿って考えると、モーツァルト(1756〜1791)による協奏曲や四重奏曲を最後に、この楽器のための重要な作品はしばらくの間ほとんど作られなくなることがわかります。

それは、時代に沿った発達をしなかった為、オーケストラの中では定位置を確保しながらもソロ楽器としての魅力はあまり顧みられなくなっていた、という理由がまず挙げられるでしょう。

ジャン・ルイ・トゥルー(1786〜1865)がフルート奏者として活躍していた1800年代は、楽器の改良が盛んに行われた時代でした。

改良者としてはテオバルト・べーム(1794〜1881)というドイツのフルート奏者が今では有名ですが、トゥルーも例にもれず研究・開発を続けました。

後にベームはトゥルーのことを「大音量で有名だった」と言っていますが、楽器の音量がそれまでより出せるようになり、キーの配置により更に早く指をまわせるようになると、たくさんの表情豊かな作品が生まれました。

この曲は15からなる「グランド・ソロ」の中の一曲で、楽器の改良を喜んでいるかのように現れる早いパッセージと、洗練された表情豊かなメロディが見事に溶け合ったもので、当時の彼の天才ぶりを伺わせる作品です。

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