バロック時代のフルート音楽と近代のフルート音楽

いつの時代も音楽と社会・歴史の歩みとは切り離しては語れないものです。

ドイツ・ロマン派の音楽もまた「革命の時代」という社会情勢の中で生まれたものでした。

イギリスの産業革命が大きな変革の拠り所となったように、フランスの大革命がヨーロッパの政治を大きく揺さぶりました。

当時の作曲家は、民主主義を抑圧する政府の監視や緊迫した雰囲気の中で、自由や希望を精神世界である音楽の中に求めて創作活動を展開していきました。

それ以前の教会や宮廷中心の音楽とは異なり、自分自身の熱い情熱やあこがれをストレートに表現するという作曲技法に変わっていったのです。

次第に演奏家の編成は大きくなり、演奏会が行われる場所も広くなるなど、要求される音やそのための楽器も変革を余儀なくされました。

フルートもそういった時代の流れで大きく変わり現在のようなものになりました。

しかしながら革命に時間が費やされたように、楽器の改良もテオバルト・ベーム(1794〜1881)という当時のフルーティストの手によって20年近い年月をかけて研究が続けられたのです。

その試行錯誤の日々が長かったのと、ドイツ人にベームの新しい楽器が普及するのが大幅に遅れたために、ドイツ・ロマン派におけるフルート音楽はそれほど多くは残されませんでした。

その中でも、今回演奏する作品の作曲家達は、当時の優れた演奏家に霊感を受けたり、歌曲からの可能性を求めて名曲を残しています。

世紀末の渦中にある人々の魂が宿っている作品といえるものばかりです。

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