バロック時代のフルート音楽と近代のフルート音楽

今日フルートというと横笛のことを一般的にいいますが、古代からフルートには縦笛(リコーダー)と横笛(トラヴェルソ)の二通りありました。

ルネサンスの時代まではリコーダーのほうが主流でしたが、17世紀になると演奏会場の拡張や音楽表現の多様化により更に豊かな表現力を持つ楽器が要求されるようになりました。

脇役的なリコーダーよりも、感情表現を豊かにし独立した主張のできるトラヴェルソが注目されるようになります。

そのためトラヴェルソの最初の教則本を書いたオトテール(1764〜1763)は宮廷楽器奏者として活躍し、トラヴェルソを世に広めました。

最初は木管に穴の開いた簡単なつくりのものでしたが、その楽器が音楽に多用されるようになると様々な方面から研究が進み数多くの名演奏家が生まれました。
19世紀にドイツでフルーティストとして活躍していたテオバルト・ベーム(1794〜1881)もその一人で、演奏活動をする傍ら楽器の研究をし、自作のフルートで演奏するために作曲も手掛けていました。

その豊かな経験と、もともと金細工職人としての技術を持ち合わせた彼は楽器改良の分野で頭角を現し、1832年に現在の楽器のもととなる「ベーム式フルート」を発表します。

彼はドイツでこの新しい楽器を披露しますが、それまでの楽器とは音量も指遣いも違うので受け入れられず、その楽器を手にフランスへ渡り彼の見事な演奏によって広めました。

そして柔らかく明るい音を持ち、表現力に富んだ新しいフルートにふさわしい作品がたくさん作られました。