「音楽の友」2007年7月号演奏会評より(高山直也氏)


藤井の第9回のリサイタルは「音楽の中の文学」というテーマで、前半が、フォーレ「ファンタジー」op.79、マルタン「バラード」、タファネル「《魔弾の射手》幻想曲」、後半がゴーベール「ロマンティックな小品」、シューベルト「《しぼめる花》の主題による序奏と変奏曲」と、フルートの知名的作品による親しみやすいプログラム。

全体に淡々とした趣とともに気品のある佇まいが藤井の持ち味であり、彼女の清澄な音色が会場を優しく包み込んでいたのが印象的。慎重な音の運びと的確な演奏であるがやや慎ましく、控えめなエア・コントロールにソノリティがいまひとつ欲しいといえなくもない。

しかしながら、ゴーベール「ロマンティックな小品」では、チェロの松本ゆり子の好サポートもあり、奥行きのある音楽とともに、三者の均衡したアンサンブルの妙と融合一体感が聴かれ、当夜の白眉であった。

藤井の魅力のひとつは演奏の立ち居振る舞いなど、音楽を超えての香り高い気品と優美さを併せ持つことであろう。